「EU離脱」って、そういうことだったのかー秋元千明『復活!日英同盟ーインド太平洋時代の幕開け』を読む / 4-16

英国をどう見るかーかつては、世界に冠たる海洋国家として七つの海に君臨した勇壮なる国家だったが、米国にその首座を明け渡してからは「英国病」の名の下に落ちぶれる一方。最近に至っては、すったもんだの内輪揉めの挙句に「EU離脱」から、あわやスコットランド独立かとの動きに苛まれる始末。ミニ・トランプばりのジョンソン首相も「コロナ禍」に悪戦苦闘中。こんなイメージが一般だと思われるが、それをぶっ飛ばす凄い本が『復活!日英同盟』である。著者は元NHK解説委員の秋元千明氏。現在は英国王立安全保障研究所(RUSI)日本代表である▲秋元氏は、英国が外交戦略の見直しに立った上で「EU離脱」を選択し、グローバル・ブリテンの構想のもとに、今や日本と共に「インド太平洋時代」を担う存在であることをこの本の中で、克明に明かしている。つまり、「EU離脱」によってやむなく戦略変更を迫られたのではないことを、安倍・メイ外交に遡って(更に野田民主党政権時の動きにも)、日英合作の経緯を追う中で証明してみせているのだ。日英同盟の復活で「インド太平洋」構想に筋金が入り、それによって中国の「一帯一路」構想に立ちはだかることが可能になるというのである。なんだか急にユニオンジャックに後光が差してきたかのように思われる▲これを読み終えて、元英国大使の林景一氏(前最高裁判事)の著作『英国は明日もしたたか』を思い出した。2017年に出版されると同時に読み、このブログでも取り上げた。当時の私は、英国が「したたか」なのは過去の振る舞いに照らして解るものの、これからはもはや無理かも、と思わざるを得なかった。だが、同時にメイ首相が鉄の女・サッチャーさながらの「氷の女」と知り、その後の英国変身に一縷の希望を持ったものである。秋元さんは、2017年8月31日の「日英安全保障協力宣言」にはじまって、2021年に予定される新型空母「クイーン・エリザベス」の日本来航まで、一気に読者を惹きつける。興味深く読ませられた▲ただし「EU離脱」が逆に振れていたら、つまり「EU残留」だったら、水の泡になったかもしれないと思う。秋元氏がここで書いている流れはもちろん後付けではなかろう。だが、狙い通りだったのかどうか。恐らくは、危ない綱渡りをしたものの当初の筋書き通りに何とか事は運んだ、というのではないか。だが、そのあたりの英国内の動きには触れられていない。序章の末尾に「なぜ日英同盟なのか、その現状と今後の課題、また日英同盟再生の背景について考えてみたい」とあるものの、「日英それぞれのお家の事情に関心のある読者にとっては満足できる内容とはいえないかもしれない。その点はご容赦願いたい」とある。この辺り、日本の国内事情もさることながら、とくに英国内政治の観点からのフォローが無性に欲しくなってくることは禁じ得ない。(2021-4-16)

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