(394)400年に及ぶ攻防を分析ー竹田いさみ『海洋の地政学』を読む/6-28

『海洋の地政学』の著者竹田いさみ獨協大教授とは長いお付き合いになる。ちょうど10年前には衆議院海賊・テロ特別委での参考人質疑(平成23年8月23日)にお招きし、ソマリア沖の海賊問題などでご意見を拝聴したうえで、質問させていただいた。改めてネットで当時の様子を再聴し懐かしい思いに浸った。20年の現役生活で私は数多の学者、文化人と時々の政治課題を巡って議論をしてきたが、竹田さんは特段印象深い。ご専門に対するあくなき研究心と誠実なお人柄に強く惹かれたものである▲当時、私は海洋を巡る国際政治の動向に関心を持ち、竹田さん始め幾人かの専門家と知己を得ていた。そのうちある若手研究者が論考をまとめ本にしたいと言っておられたので、心待ちにし続けたが、結局10年余り経って未だ実現していない。400年に及ぶ海洋の歴史を辿り、現代における課題をまとめることの困難さを感じていた。そこへ竹田さんがこの本を出版された。「揺らぐ海洋秩序を前に、我々はいかに対処すべきか」について、「近現代史を海から捉え直す」作業の所産は極めて興味深い。座右に置き時に読み返したい価値ある労作である▲海洋における中国の立ち居振る舞いはいかにも挑発的である。気の短い私などつい〝怒髪天を突く〟ごとく興奮しかねない。しかし、竹田さんはあくまで冷静に淡々と分析していく。例えば、「実効支配していない島々や海域を一方的に領有していると法律に記載し、あたかもすでに領有権があるかのようなイメージを作り上げる『新手』を編み出した」とのくだりには思わず笑った。更に「中国の法律は、中国にとって便宜的な解釈ができるように整備されている」とか、「中国側の都合で接続水域も実質的に中国の領海として扱うなど、国際ルールを受け入れていない」など、ユーモアさえ感じつつ呆れ果てる▲一方、専門的な解説の合間に、アメリカの有名紳士服ブランドにまつわる余談が挿入されるなど、読む者を飽きさせない。また、戦時中における日本の民間商船の哀しい歴史についても目配りがなされている。「中国軍の南進を看過し、結果的に南シナ海の緊張を高め」、皮肉にも中国の存在感を巨大化させた、〝バラク・オバマの罪〟も忘れずに触れられている。また、著者をそれなりに知る私には、「大好きな新幹線での途中下車を封印してきた」との書き出しで始まる「あとがき」の苦労談も読ませた。誘い込まれた「海洋史の迷路」を抜け出すことが難しくなったとの表現に、臨場感が漂う。読み終えて、この人の「寄り道」の味わいを、エッセイで読みたいとの思いが募ってくる。(2021-6-28)

 

 

 

 

 

 

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