[13]ここに夢ありーフランス人の漫画『失われた田舎暮らしを求めて』を見て読む/12-27

本年最後にとっておきの漫画を取り上げます。漫画を活字で紹介するのは初めて。どうしても紹介したい特別版です。著者はWakameTamago(ワカメタマゴ)というペンネームを持つフランス人。本名はフレデリック・ペルーさん(50歳)。彼を知るきっかけは、姫路市の北端・安富町に住む高校時代からの友人Y夫婦です。ご近所に東京から越してきたユニークなフランス人がいる、とのことでした。4年ほど前に、彼の奥さん(日本人)も含めて5人で、姫路城三の丸広場での薪能を観に行きました。楽しい思い出として記憶に刻まれています。そこへ先日突然、出版されたばかりのこの本をY夫人が送ってきてくれました▲一読、ホッコリした気分になりました。と共に、〝Withコロナ〟と言われる時代を先取りした、田舎暮らしの凄い試みに深い感動を覚えています。多くの人に読んで見て貰いたいものです。実は私は西播磨の安富町の山奥で、外国人がどんな仕事ができるのかと、当初疑問に思っていました。浅はかでした。パソコンひとつで、どんなところとでも繋がることができます。そのあたりについては、既にこの2年で広く誰もが体験済みです。彼は、アメリカにある本社の仕事の上司と、生まれ故郷のフランスの友人たちと〝AI 往来〟をする一方、奥深い山あいで牧歌的生活を満喫しているのです▲この漫画本では、その生活ぶりがユーモアたっぷりに事細かに描かれていて、見るものを楽しませてくれます。漫画を描くのは子どもの頃から好きだというだけあって、とても面白く、挟み込まれるセリフや背景説明が抜群に味わい深いのです。東京から引っ越しするにあたって仲介した不動産屋の騙しのテクニックや大工さんたちの超のんびりの仕事ぶりなど、大いに笑える見事な表現ぶりです。お気に入り朝食が「納豆トースト」だというのは呆れました。フランスから東京、そして播磨へと移ってきた彼の日常が、いかに豊かであるか。それが村人たちとの交流を通じ、そしてヒルやヤモリたち、ムジナやヤギなど虫類、動物たちとの出会いを巡って展開されているのです。とてもファンタジックなエンデイングにはぐっと引き込まれてしまいましたが、ここで再現は不能。実際に本をご覧になってのお楽しみということにしましょう▲実は、彼と一緒に宍粟市波賀町戸倉の山奥に、私が理事を務める公益財団法人「奥山保全トラスト」の仲間たちと一緒に、〝トラスト地ツアー〟の一環として、植樹を兼ねて森林の実情を見に行ったことがあります。3年半ほど前のことです。彼にとって、荒廃する日本の森林を知るいい機会だったはずです。この漫画の中に印象に残る杉林が出てきます。「なんかかわいそうだね、杉たちがこんなに立派に伸びたのに、今は価値がないと言われて、そして誰も大事にしてくれない」と言いつつ、杉の幹に人が抱きつく描写。あの時の体験と学習が見事に反映されていると感じました。この漫画はフランス語版が先に出て、今回の日本語版になったようです。フランス人の感想を聞きたい思いが募ります。都会暮らしに喘ぎつつ、田舎に憧れる多くの人々に読ませたい、とてつもなく心に染み込む名作漫画だと思います。(2021-12-27)

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