【22】心騒がせ迷わせる「気候変動」ー渡辺正『「地球温暖化」狂騷曲』を読む/2-19

「地球温暖化」で大騒ぎすることはない、むしろそれは社会を壊すと、昨今の社会的風潮を真っ向から否定する本である。ことの背景が見事に明かされ、快刀乱麻そのもので、こぎみいいことこの上ない。が、それでいて、割り切れなさは残る。「されど我らが日々」とでも言おうか。鳴り止まぬ「狂騒曲」に、心騒ぐ。そうは言っても、との思いは消えない。つまり、「地球温暖化」の主因はCO2排出にありとの説への否定については分かった気がしても、それ以外の要因から地球は異変を起こしていないか、との疑問だ。世界の、日本のエネルギーの行く末をめぐる問題について考える上でそれなりに大いに刺激になる◆実は、私は2006年(平成18年)に衆議院環境委員会で質問に立ち、「地球温暖化」をめぐるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の主張を批判したことがある。と同時に、我が党の政調でも、この角度からの議論を元環境相にふっかけたことがある。温暖化の原因は太陽の黒点活動にあるかもしれず、産業活動とは直接関係がないのではないかとの主張である。恥ずかしながら、当時論壇に少数意見ながら出ていた論調の受け売りをしたものだ。しかし、委員会でも政調でも私の意見は相手にされず、「人間活動が主因である」との観点で押し切られた。結局は、「衆寡敵せず」、私は「長いものに巻かれろ」とばかりに、矛を収めたというのが相応しい◆尤も、この間にすっかり私が「狂騒曲」に巻き込まれてしまった。2030年までのあと10年足らずの間に、CO2排出にストップをかけ、環境汚染を止めないと、地球は破滅に向かう危険性があるとの主張に与している。要するにブレたのである。この本に出くわして、なんのことはない、15年前頃に戻った気分である。ここは居住まいを正し、問題の所在を整理しないといけない、と思わざるを得ない。この本での著者の主張のポイントは、「地球温暖化」は慌てることではないし、CO2はむしろ植物の生育を助けて、人類社会をゆたかにするものだというところにある◆さらに、地球の気温を巡っては、冷温化がまたくるかも知れず、まだ闇の中である。地球の異変を騒ぐことは、誇大妄想であり、温暖化対策は軽挙妄動だ。また、再生可能エネルギー開発に取り組むことは、「一理百害」 に他ならぬ。学界と役所とメディアは自縄自縛に陥っており、環境問題は「環狂」問題に陥っていると最後に結ぶ。興味深いのは、私とは「逆にブレた」人々が海外には多いと説くくだりである。つまり、「当初は人為的温暖化説を疑いもせず受け入れながら、真相に気づいて『転向』した大物も少なくない」として、その「大物」名を次々列挙しているのだ。そして、著者自身も「温暖化論に違和感を覚えつつも当時は本質が見抜けていなかった」と正直に述べている。2002年に社会学者の薬師院仁志氏の『地球温暖化論への挑戦』なる本から影響を受けたことを明かしているのだ。中国とインドの経済成長が鈍化するであろう数年後に、未だ大気中のCO2が増え続けているなら、その時に初めて答えが出るというのだが、さていつのことになるやら。このテーマ、引き続き考えていきたい。(2022-2-18)

 

 

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