自公政権が誕生して20年余り、かつては次々と組み合わせが変わっていった連立政権だが、今では当たり前のようになっている。それはこの本のサブタイトルにあるように、自公両党の「『連立』にみる強さの正体」を見抜くことがポイントなのだろう。様々な政治学者や評論家がアタックしているテーマであるものの、中北氏のこの本が4年前に出版されて以来、最も核心をついた書籍として定評がある。今取り沙汰されることの多い「揺れる自公関係」を考える上で、大いに参考になる◆著者は、「あとがき」で書いているように、「政治学の連立理論に位置付けることに努め」、「比較可能なものとして捉え」たという。サブタイトルに「正体」なる言葉を使ったのは、「暴露する」のではなく、「色眼鏡で見ない」という意味をも込めている、と。確かに、これまでは、公明党の最大の支持母体である創価学会を「色眼鏡で見」た「暴露本」的傾向を帯びたものが多かった。それに対して、この本は、前世紀末からの連立政権の歴史を丹念に追いながら、最も長期に渡って安定を見せてきている自公政権の奥深くに取材先を求めて、その実態を描き出している◆その意味で、現実に展開する政治に関心を持つ人々にとって興味深いものには違いない。ただ、私のように公明党誕生直後からこの党をウオッチャーとし、またプレイヤーとして見聞きしてきた人間からすると、やはり物足りなさは残る。それは、この本が結局は「連立という視角からみた自民党研究」であることに起因する。要するに公明党研究ではないのだ。自民党との連立政権のパートナーとして定着した公明党として、最も忘れて欲しくないのは、大衆のためになる政治の実現である。政権の「安定」を第一に考えると、「改革」がおざなりになってしまう。庶民を苛めたかつての自民党政治は変わったのか?知らず知らずのうちに、権力の側の片棒を担いでいないかどうかをチェックする必要がある◆中北氏は、この本の結論で、「固定票の分厚さと選挙協力の深さの両面で、自公ブロックの優位が顕著」であり、野党ブロックが政権交代を目指すには、「選挙制度改革を含む政治改革を行う方が近道かもしれない」と述べている。この4年、その兆しはない。立憲民主党の共産党との共闘問題に終始し、行き詰まりを見せているだけで政治改革の動きは弱い。むしろ、国民民主党の「自民党か維新か」の選択や、維新の自民党との距離が取り沙汰されていることに見るように、現実政治は〝与党の肥大化〟の方向に流れがちだ。それでいいのかどうか。大いなる論争が待たれよう。(2023-8-14)