【99】境家史郎『戦後日本政治史』を公明党をめぐる「老若対話」で読む/10-22

 この本は、占領期から今に至る戦後日本政治の77年余を振り返ったものである。著者が「コンパクトな通史」と規定しているように、政治についてよく知らない若い人びとむけに書かれたものだ。全体の流れを掴むには重宝だろうが、より玄人的な日本政治論を好む向きには、ふさわしくないかもしれない。憲法9条を変えたがってきた自民党だが、その憲法のお陰で「軍事力強化」の是非をめぐるイデオロギー対決が続き、結果的にその地位が安泰となっているとの逆説の効用を説いている。憲法論争ある限り「日本の戦後」は終わらないというわけだ。この本での公明党に関する記述をめぐって、結党当時を知る古い世代(叔父=70代)と、自公連立政権の有り様に関心を持つ若い世代(甥=40代)との対話を試みてみた。

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甥】この本は、日本が戦争に負けて米国に占領されてから、今に至る戦後77年余の政治の歴史がよく分かって、随分ためになったよ。ただ、公明党に関する記述がほとんど無くて、ちょっと寂しい気がした。こんなにも戦後政治史において公明党は存在感がないのか、と。

叔父】 確かに著者は殆ど公明党を無視しているように見えるね。党結成、PKO 法制定、新進党結成、自公連立あたりのところでほんのちょっぴり出てくるだけ。君と同じくらいの歳の気鋭の政治学者の本なので、世の中で注目されているだけにとても残念だよ。尤も、自民党以外の政党への眼差しも似たようなもんだけど。

甥】そんなに気にしなくてもいいんじゃないの?政権の中軸の動きから公明党はどうしても傍流に位置してると見られるけど、自公政権が長続きしているのは、「政治の安定」という観点からすると、それなりに評価されていると思うよ。ところで、叔父さんが悔しがるのは、公明党のどういう役割が見えてこないからなの?

叔父】そりゃあ、「55年体制打破」に青春を賭けた身からすると、現実に自民党一党支配にピリオドを打たせた公明党の役割が評価されていないことは悔しいね。その上、40年ほど経って結局は「ネオ55年体制」という形で、「日本政治は『元いた場所』に戻っただけなのか」と、問いかけ、〝元の木阿弥〟だというのはねぇ。

甥】いえ、それって当たってるよ。かつての社会党が様々の紆余曲折を経て、いまの立憲民主党になってるし、旧民社党はまるで現在の国民民主党そっくり。あの頃「維新」はなかったといっても、今はなき日本新党に似てなくもないしね。尤も著者が言いたいのは、憲法をめぐる対立が変わらんということなんだろうけど。

叔父】確かに、昔の55年体制と今の政党分布のありようは違うと言っても、通用しないとは認めるよ。自民党が再び野党を圧倒しまくっている現実が甦ってきていることに疑問はないからね。かつてこの本でいう「改革の時代」に、公明党は野党の中核として頑張ってたのに、今では与党の一角を厳然と形成してるんだからね。いわば菓子箱の包装は同じだけど、中の饅頭の味は違うと言ってるようなもんで、わかりづらいだろうね。

甥】今の例えからいうと、中身の饅頭の味が向上してれば、良いってことじゃあないのかなあ。公明党がかつて外から自民党政治を壊そうとしてあれこれやったけど、うまくいかず、内側から変えようとした努力が認められていないと、叔父さんは言うんだろうけど、僕らから見て結構公明党は、子育て政策や若者政策の分野で、頑張ってきてるよ。携帯電話料金の引き下げ、出産一時金の増額、奨学金制度の拡充など中々いいよ。例えとしての饅頭の味はかなり良くなっている。こんな味じゃあ不満?(笑)。

叔父】君のような若い世代が公明党の現状を肯定的に見るのは意外に思うよ。あまりに野党がだらしないからだろうね。私の世代は、もっと激しく世の中を変えていかないと、日本は益々ダメになってしまう、と自分たち世代の無責任がもたらした現状を棚上げして、焦ってる感なきにしもあらずだけど。

甥】ん?我々世代も、改革志向はあるよ。与党公明党の現状に100%は満足していないけど、必ず、今の政治を一歩ずつでも変えてくれるものと、信じてるよ。もし、公明党が与党から外れてしまうと、自民党政治のチェックをどの党がするのか?昔のような政治腐敗が一段と強まってしまうのはごめんだね。

叔父】  ウーン。その辺の現状認識がかなり違うね。我々世代の友だち連中は、公明党って、自民党との間で、選挙協力とか政策の合意などにとどまらず、もっとこの国をどういう方向に持って行くのかについて、与党内議論をやって、国家ビジョンを明確にすべしという意見が多いね。現状では、自公政権の方向性が見えないとの声が強い。東京から東北か信越北陸方面に行くのか、はたまた飛行機に乗って、九州、北海道に連れて行かれるのか分からん。まるで行き先の定まらぬまま旅行会社でああだこうだと言ってるだけみたいだ、と(笑)。

甥】「政治はよりマシ選択だ」って、叔父さんはいつも言ってるよね。理想には遠くても、現実政治を見た時に、野党は勿論、自民党に比べても公明党がよりマシだと思うよ。その辺を選挙戦では訴えていきたいね。(2023-10-21)

 

 

 

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