(125)少量の放射線と温熱療法の効果を知るー伊藤要子『HSPが病気を必ず治す』

(125)先日、名古屋市立大学病院の桜講堂で開かれた第六回放射線ホルミシス講演会(一般社団法人日本放射線ホルミシス協会主催)に行ってきた。この協会を裏で支える、青山登(青山シュタイン社長)と亀井義明(坑道ラドン浴施設「富栖の里」理事長)の両氏と、私は長年の友人である。及ばずながらお手伝いをしていることもあって、この種の会合には積極的に顔を出している。今回は初めての名古屋開催であったが、100人を超える聴衆の皆さんが来られた。私も同地に住む4人の友人を誘った。この日は、中村仁信大阪大学名誉教授、芝本雄太名古屋市大大学院教授、武田力大阪ガン免疫化学療法センター理事長、清水教永大阪府立大学名誉教授ら、放射線医学の分野を代表する学者の講演があり、3時間に及ぶプログラムが次々と続いた▼これまでの講演会で「少しの放射線は体にいい」ということは何回も聞いてきた。だが、放射線科医や放射線作業者、パイロットの人たちが低線量放射線を浴びて、かえって長生き出来ているという話は印象深かった。とりわけ中村先生の、「日本の食品や水の放射能規制は、厳しいというより馬鹿げている」との指摘は耳に強く残る。「欧米や国際規格に比べて、食品は十分の一、水は二十分の一。日本中の国産食品のすべてが汚染しているとの前提で計算されているためにこうなった」として、「一リットル当たり100ベクレル程度では飲んでも問題ない」との主張は、放射能汚染に異常なまでに神経質な人たちに聞かせたい▼中村先生と初めて会ったのは、「富栖の里」での講演を聞いた2年ほど前のこと。その穏やかな佇まいからはおよそ想像できないほど、放射線をめぐる”俗論”には手厳しい。『福島を原発の風評被害から救え』とのインタビュー記事での発言は痛烈だ。加えて、低線量放射線照射の動物実験によるガン抑制遺伝子の活性化や、熱ショック蛋白(HSP)が増えることも分かったとの記述は興味深い。「温熱療法では熱ショック蛋白が出ることによって、免疫力が高まり」、「ストレスから体を守ってくれますので、HSPがホルミシスに一役買っていることは十分考えられる」と言われるのだ。HSPなるものは、最近テレビ番組でも取り上げられているようだが、熱というストレスで増える蛋白のことをさす。私はこれまで殆どこのことについての知識はなかった。ところが、この日の講演の最後に、伊藤要子修文大学教授の「マイルドな加温で増加するヒートショックプロテイン(HSP70)の効果」という特別発言があった。これは極めて分かりやすく面白かった▼伊藤教授の発言は、要するに「長風呂は体にいい」と聞こえた。これまで殆ど「カラスの行水」(入浴時間が極端に短いこと)を地で行く、私にとって衝撃だった。講演会終了後、5人の講師の先生方を囲む懇親会があり、そこで色々と有意義な話を聞くことが出来た。とくに伊藤先生は頭にバンダナを巻いたユニークな先生だった。どなたともすぐに打ち解ける性質(たち)の私なので、この人と昵懇になるには時間はあまりかからなかった。『ヒートショックプロテイン 加温健康法』『HSPが病気を必ず治す』といった著作を表しておられるというので、購入すればいいものを、後日さっそく送っていただいた。「低体温は生活習慣病」だとして、「ダイエットをするなら食事を減らすより、低体温を解消することを勧めたい」との指摘はとても斬新に聞こえる。この人の勧めるHSPを増やす入浴法は「基本は42度Cで10分、41度Cで15分。40度Cで20分である」。健康に関する書物は世に数多あるものの、この本は一味も二味も違うように思われる。まずは、私自身が実験台になるので、今後の報告をお待ちいただきたい。(2015・9・29)

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