このところ沖縄に関するとても胸打つテレビ番組を見た。一つはNHKスペシャル「沖縄戦 全記録」であり、今一つはBSの「なぜペンをとるのかー沖縄の新聞記者たち」である。前者は先の大戦で唯一地上戦が展開され、12万人にも及ぶ一般人が犠牲になった沖縄戦の実態をあますところなく伝え、正視しづらいばかりか、聴くにも堪えられないほどのリアルさだった。後者は普天間基地からの辺野古移設に反対する住民の動きに迫る琉球新報の記者たちの日常を克明に追ったもので、沖縄のメディアが「偏向」といわれることへの静かな怒りに、慄然とするものを感じた▼先に『小説 琉球処分』の読書録を取り上げたが、続けざまに松島泰勝『琉球独立宣言 実現可能な五つの方法』を読んだ。この本の帯には作家の池澤夏樹氏が「居酒屋から論壇へ、独立論のフィールドが変わった」との推薦文を寄せている。先のテレビ番組の放映と併せ、重要な問題提起に対して、日本人の誰しもが真剣な対応が迫られていると確信する。沖縄に対する日本政府の立ち位置は、明らかに差別を含んだものである。私はこのままいくと独立しかない、との思いを抱いて久しい。せめて準国家の扱いをしてでも真正面から向き合わないと、行きつくところ(つまりは沖縄の独立)に行くしかないと思ったもののだ▼松島さんは激しい怒りを抑えながら冷静な筆致で独立への道筋の必然性を説く。これまでこんなに真剣な独立宣言文を読んだことはない。ただし、1⃣琉球人の独立賛成派を増やす2⃣日本で独立賛成派を増やす3⃣国際世論を味方にする4⃣国連、国際法にしたがって進める5⃣日米両政府に辺野古新基地建設を断念させるーという五つの方法についての提示は、「おわりに」のなかにでてくるだけ。あまり具体的な方法論は示されていず、いささか看板倒れ的な印象は覆いがたい。しかし、それを補って余りあるほどこの本からは琉球人の不屈の魂が感じられ、いい加減な気持ちで読むとたじろぎかねない▼沖縄の問題を考える上で重要なことは、そもそも日本そのものが未だ独立を果たしていないことを自覚する必要があるのではないか。戦後70年。米国占領は形の上では終わったように見えるが、それはうわべだけ。「実態は半独立国家」というのが偽らざるところなのだ。だから「琉球独立宣言」のまえに「日本独立宣言」がなければならない。といっても、それは日米同盟を捨てることでも、安保法制を断念することでもない。そんなことをすればたちどころに国家運営は行き詰る。現実を見据えたうえで、遠くない将来に本来の姿(真の独立)を取り戻すことは、沖縄も日本も同じではないか。沖縄をいわゆる左翼に支配された”イデオロギッシュな地”とみてはならない。「琉球ナショナリズムの地」だと見ていけば、その時に初めて独立を必要とするのは日本も同じだということが見えてくるように思えてならない。ただ、双方ともに果てしなく遠い道というほかないのは残念である。(2015・10.23)