【138】「普通ではない政治家さん」━━石破茂『異論正論』を読む/7-20

 石破茂さんと私はかつて同じ政党に所属していた━━っていうと、ほんまかいなと訝しく思われる向きもあろう。そう、新進党である。1993年6月、宮澤喜一内閣に不信任案が出された。それに石破氏は賛成票を投じた。そのため、次の総選挙で自民党からは公認されなかった。無所属で出馬しトップ当選、その後に小沢一郎氏率いる新生党に。そして新進党に合流した。衆院の公明党も一緒だった。石破さんには『集団的自衛権』『国防』『日本列島創生論』など幾つかの専門的な著作がある。そのうち、政治エッセイ風の標題作(2022年)を選んだ。石破さんは自民党議員の中での評判に比べて、全国の党員始め庶民大衆受けは圧倒的に高い。ひとたび党を離れた経歴を持つ人には疑念がつきまとうのだろうか。それを意識したと見え、この本の中に、「なぜ私は離党したのか」との見出しで5頁ほどの解説がある◆「(分裂後の自民党が)憲法改正論議を凍結する、という方針だったことが」原因だという。しかし、新たな新生党も新進党も権力闘争の繰り返しだけ。当初掲げていた集団的自衛権の行使容認や憲法改正に曖昧な方向しか見えず、結局次の総選挙で再度無所属に戻り、当選後自民党に復党した。新進党が自滅した要因は、「自民党と対峙して二大政党制を実現する」との、当時の左から真ん中、右までの幅広い「政治改革の夢」が脆くも崩れたことにあった。石破さんのここでの説明を聞く限り、私たちとは「同床異夢」だったのである。1994年から僅か3年の寿命だった新進党はただ〝罪作り〟だったのかもしれない。復党後、臥薪嘗胆の時を経て、石破さんは2012年から4回続けて自民党総裁選挙に出馬する。しかし悉く負け続け、前回は出馬を見送った。こういう経歴の人は自民党では過去に見出せない◆もともと学識豊かな論客家肌の上に、総裁選を経て一段と磨きがかかってきた。あたかも12年浪人している司法受験生のようなもので、この間常に勉強を積み重ねてきているイメージは強い。この本でも随所に窺える。特に、第10節「外交の場では歴史の素養が求められる」では、フランス国防相とのイラク戦争をめぐる論戦から説き起こし、米中関係を考える上での米ソ対立との歴史的相違点などに論及したのち、各国首脳の思考回路を知っておく必要があると強調。最後に、「あらゆる事態を想定しておくことが政治家には求められ、そのためには寸暇を惜しんで本を読む、識者にお話を伺うなど、勉強をし続けることが絶対に必要である」とまで訴えているのだ。ここ数年、国会が始まり衆議院予算委の場面になると、質疑者の右斜め後ろの席に石破氏がいつも座っている。質疑の展開と彼の表情、仕草を合わせ見ると面白い。その際の心象風景の解説は心憎いほど。自身に質問の機会がないことを嘆きつつ、チャンスが来れば、「見ている国民の方に納得いただけるような構えの大きな話をしたいもの」だという◆ここで、憲法9条の改正を巡っての考え方の違いについて触れたい。「自衛隊の存在の明記」をしたいとの安倍晋三首相のスタンスに対して、彼は異論を唱えた。その理由は「それまで自民党内で決めていた改憲案とはまったく別の思想によるものだったから」だという。確かに石破さんの言う通りだろう。元をただすと、安倍さんをその気にさせたのは、太田昭宏公明党前代表であり、私も後押しした。それに乗った安倍さんは柔軟であり、乗らなかった石破さんは真っ直ぐ過ぎると言うのが私の見立てである。私が石破さんの主張で最も同調するのは、「これからの日本は『自立精神旺盛で持続的な発展を続けられる国』を目指すべきだ」として、「その実現のためには国のグランドデザインも見直していく必要がある」と強調しているところだ。見直すべきものがあるのかどうか。国の方向性の議論なき連立政権は危うい。この本の出版ののちに、「旧統一教会問題」や派閥絡みの「裏金作り」が表面化した。安倍さん健在なりせばいかなる対応をしたものか極めて興味深い。石破さんのこれらについての考え方はやはり同党の中で最も光彩を放つものだった。(2024-7-20)

【他生のご縁 束の間だけ同じ釜の飯を食った仲】

 ひと回り下の同じ酉年。同じ大学の出身で、先に書いたように同じ政党に属していたこともあります。思い描いた政治改革の素描は少し違いましたが、懐かしい思い出です。ずいぶん前ですが、「防衛」「農水」ばかりでなく、もっと幅広いテーマに関心を持って、などと身のほど知らずにも忠告めいたお節介を焼いたこともありました。時に応じてメールのやり取りもするなど、引退後の今も親しくさせて貰っています。

 かつて自民党には総裁候補が踵を接して待機していました。大向こうのそれなりに納得する布陣でした。今はどうでしょうか。ともあれ、そろそろこの人の出番ではないかと睨んでいます。本文中に書きましたように、準備は万端、十分過ぎる勉強をしてきました。運気到来です。

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